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シアワセモノマニア
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ハッピーをお届けする空想娯楽物語屋

No.32

愛するもの、自らの心の椅子に座らせたものを失えば空っぽになるのは目に見えている。
自分の手に握りこんでたと思っていた、たったひとつすら失って、でも別にそれをことさら嘆くことはしない。
ただし、指摘されると少し痛そうな顔はするから自覚はあるんだろうな……。
ともあれ、Xって、別に無感情とかそういうわけじゃなくて、ただただ、空っぽな人なんだよな~。
だから、空っぽになっているその中に何かをそっと入れてあげるとゆるやかに反応するようになる。
入れたところで、ぽっかり穴が開いているのだからすぐに枯れてしまうけど……。
でも、「私」がしていることって多分そういうことなんだと思うんだよなあ。空っぽのXに少しだけ何かを注ぎ込む行為。
もちろん「私」にそんな意図はなくて、結果的にそうなっているということなんだけれども。
Xにとって、名も無き試行の数々は、決してただただ無味乾燥なものでもないのだよな、というお話。
#無名夜行

創作