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シアワセモノマニア
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ハッピーをお届けする空想娯楽物語屋

No.55


●appendix / about Trevor Traverse

 トレヴァー・トラヴァースについて、私は詳しく説明することができそうにない。
 表面上のことならば、いくつか。例えば、彼が隠密攻撃翅翼艇『ロビン・グッドフェロー』の乗り手である、とか。我々第二世代の中でも、否、霧航士全体から見ても稀有ともいえる精密飛行と精密射撃の両者を実現する言葉通りの優等生である、とか。船に乗っているときと降りているときとで、まるで別人のようである、とか。
 そう、翅翼艇を操る際の彼は、ゲイル曰く「えげつない」「ろくでもない」「いやらしい」、言ってしまえば聞くに堪えない言葉を並べ立てて、己の限界を目指し、己と並び立つ『相手』を求めて情熱的に振舞う。特にゲイルの飛ぶ姿に対する愛情は偏執的で、それ故に『エアリエル』の僚機として常にゲイルの側にあろうとする。ただ、それでいて私やオズの指示を聞き漏らすことも、理由なく逆らうこともない。そういう点において、彼は極めて真面目というか、有り体に言ってしまえば「理想的な兵隊」と言ってよいと思っている。
 一方、陸の上では神出鬼没かつ気ままな、猫のような生態をしている。ついでに、ゲイル個人のことは毛嫌いしている。これはトレヴァー自身の言葉だが、彼が一番嫌いなものは「何でもできると根拠もなく信じていて、実際にできてしまうタイプ」らしい。要はゲイルのことであり、つまるところトレヴァーの本質は努力家なのだろう。その努力は見せないけれど。否、それだけじゃない。彼は何も見せないのだ。本音も、感情も、背景も。
 霧航士としては、兵隊としては、有能さを示せば十分だろうとトレヴァーは笑ってみせるし、霧航士の誰もが彼を「そういうものだ」と認めている。
 それでも、私は、彼に対して興味を抱くことを止められずにいる。その温度を欠いた皮膚の奥に隠したものの正体を、知りたいと希うのだ。
 
(語り手 ユージーン・ネヴィル)
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#談話室の飛ばない探偵たち

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