No.613
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第八十七回「手」2022年06月04日
「ウェール、手足がないと不便じゃない?」
魔法の国からやってきたウェールは、喋るぬいぐるみにしか見えない。
大きな目に、頭から伸びる翼飾り。長い胴を覆うのはふかふかの毛。毛の生えた蛇、といえばいいだろうか。
すずめの問いに、ウェールはこくんと首を傾げる。
「大抵のことは魔法でできるからね」
「でも、今は魔法使えないでしょ?」
ウェールの魔法は、今はすずめに宿っている。だから、普段はモップのように床の埃を巻き込んでは、洗濯機に突っ込まれる日々だ。
けれど、ウェールはすずめを見上げて言うのだ。
「困ったら、その手ですずめが助けてくれるだろう?」
その疑いのない調子に、すずめは「もう」と笑ってしまうのだった。
――『その手で君が』
――『異界』に赴くのは、肉体から切り離された意識だ。
異界潜航サンプルのXには詳細もリスクも説明したが、彼が正しく理解しているかは知らない。寝台のXに緊張の色はなく、目を閉じた顔は穏やかですらある。
ディスプレイがXの視界の『異界』を映し出す。闇の中に立ち並ぶ木々が青白い輪郭を描く、幻想的な森だ。
Xは手を持ち上げる。手首を戒める手錠は『異界』にはなく、意識が形作る無骨な掌に、雪のように降る光が落ちる。それに温度や手触りはあるのか。我々が観測できるのは視覚と聴覚だけで、光を握るXの感覚を知ることはない。
やがて指の間から漏れる光が消え、Xの視線が手から木々へと移されて。
「……観測を、開始します」
――『異界潜航実験』
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